抗がん剤感受性検査の利用例
症例38(犬、11歳、去勢オス)
病歴:
全身の脱毛と体表の結節、リンパ節の腫れが見られ、他社の病理組織検査の結果リンパ腫と診断されたため、リンパ節を生検して抗がん剤感受性検査を行った。
感受性検査結果:
培養した細胞ではカルボプラチンで95%ほどの抑制効果が認められ、L-アスパラギナーゼ、ニムスチン処置に対しても80 %ほどの抑制効果が認められた。
メルファラン、シクロフォスファミド処置に対しては68-75%ほどの抑制効果が認められた。
培養後の細胞観察像: 腫瘍細胞の存在を確認
治療:
プレドニゾロン(2 mg/kg)、L-アスパラギナーゼ(400 IU/kg)を投与。その後L-アスパラギナーゼを三週ごとに三回投与した。
予後:
左前肢端以外は治療開始後4カ月時点で病変は現れなかったが、左前肢端に新たな病変が現れた。
症例39(猫、8歳、避妊メス)
病歴:
乳腺がん疑いの組織を摘出し、病理組織検査の結果、乳腺がんと診断されたため、抗がん剤感受性検査を行った。
感受性検査結果:
培養した細胞ではトセラニブ、ラパチニブで90%ほどの抑制効果が認められ、ゲムシタビン処置に対しても80%ほどの抑制効果が認められた。
タモキシフェン処置に対しては70%ほどの抑制効果が認められた。
ミトキサントロン、カルボプラチン、ビンブラスチン処置に対しては60%ほどの抑制効果が認められた。
培養後の細胞観察像: 腫瘍細胞の存在を確認
治療:
術後にドキソルビシン5mg/m2 を1回投与後、トセラニブの隔日投与を四ヶ月行った。
予後:
投薬頻度を減らし、現在(治療開始六ヶ月後)は週1回の投与を行っているが、肺やリンパ節への転移は認められていない。
症例41(猫、8歳、避妊メス)
病歴:
乳腺がん疑いの組織を摘出し、病理組織検査と抗がん剤感受性検査を行った。
病理組織診断:
乳腺部腫瘤:乳腺腺癌、ソ径リンパ節:乳腺腺癌の転移病巣
乳腺上皮が腺腔や管腔を形成しながら、それらの中に乳頭状や小乳頭状に増殖している。
感受性検査結果:
培養した細胞ではカルボプラチン、トセラニブ処置に対して濃度依存的な抑制効果が認められた。
カルボプラチンの高濃度処置では50%ほど、トセラニブの高濃度処置では90%ほどの抑制効果が認められた。ドキソルビシン処置では抵抗性を示す結果となった。
培養後の細胞観察像: 増殖細胞の存在を確認
治療:
術後にトセラニブ(パラディア)の投与を週3回、3か月行った。
その後、肝障害(AST, ALT, ALPの高値)が認められたため、投薬頻度を減らし、肝酵素の値が基準値に戻った後に、週三回の投与を再開した。
予後:
治療開始6カ月後の現在の時点で転移や再発はみられていない。