抗がん剤感受性検査の利用例
症例6(犬、15歳、去勢オス)
病歴:
膀胱粘膜の肥厚が認められ、細胞診において移行上皮癌が疑われたため、ピロキシカムを投与するものの変化せず。
エコー上は腸骨下リンパ節や尿道への転移はなし。血液検査上は正常。膀胱内カテーテル吸引にて抗がん剤感受性検査を実施。
感受性検査結果:
作製したオルガノイドにおいてはカルボプラチンの感受性が良好であり、IC50は平均くらい、高濃度での抑制率は8割ほどであった
培養直後の細胞観察像: 増殖スピードは他症例と比較して速め
治療:
カルボプラチン計4回の投与
予後:
腎数値は正常で骨髄抑制なし。高濃度の抗がん剤処置時に消化器毒性が認められた。3か月後現在、SD。
症例7(犬、11歳、オス)
病歴:
肝臓の多発性病変、腎臓・副腎・右心室壁・心中隔・後大静脈など多くの部位に腫瘤形成につき腹水の貯留が認められている。
細胞診では髄様癌の転移を疑う所見があった。また、リンパ節転移もあることから術後カルボプラチンを5クール投与。腹水沈査から抗がん剤感受性検査を実施
感受性検査結果:
ラパチニブの感受性良好(IC50、抑制率ともに良好)、ビンブラスチン・カルボプラチンについては抵抗性を示した。
培養後の細胞観察像: 増殖スピードは他症例と比較して遅め
治療:
ラパチニブの連日投与
予後:
投与後の激しい下痢により中止。検査より約3か月後、転移病変により死亡。
予後:
食欲良好。抗がん剤投与後活動性の低下が認められるものの、ビンブラスチン投与後は明らかな再増大なし。
症例9(猫、10歳、避妊メス)
病歴:
二ヶ月前に右乳腺にマスを認め動物病院に受診。右乳腺片側全摘出術を実施し、病理組織検査と抗がん剤感受性検査を実施。
感受性検査結果:
カルボプラチン、ドキソルビシン、シクロフォスファミドの三薬剤でいずれも抵抗性を示したため、追加検査を実施。
ラパチニブ、ゲムシタビン処置で顕著な抑制効果が認められた。
治療:
ゲムシタビン100 mg/m2を週1回3週投与
予後:
抗がん剤投与前にリンパ節転移が出現。薬剤投与後3ヶ月が経過し、病態の進行はコントロール出来ている。