抗がん剤感受性検査の利用例
症例34(犬、10歳、オス)
病歴:
口腔粘膜のメラノーマ疑いのため、病変部を切除し、病理組織検査と抗がん剤感受性検査を実施した。
病理組織診断:
口腔メラノーマ
メラニン色素を持つ腫瘍細胞の増殖を示す。
感受性検査結果:
培養した細胞ではトセラニブで80%ほどの抑制効果が認められ、パクリタキセル、カルボプラチン処置に対しても63-66%ほどの抑制効果が認められた。
ブレオマイシン、マシチニブ処置に対しては53-56%ほどの抑制効果が認められた。
培養後の細胞観察像: 増殖細胞の存在を確認
治療:
カルボプラチン 300mg/m2 を三週ごとに投与。
予後:
カルボプラチン投与により一旦寛解するも、二回目の投与後3週間後に膵炎を発症し、抗がん剤投与を延期した。
その一か月後に再発のためカルボプラチンを再投与し、また一か月後に減容積手術を行った。
症例36(犬、11歳、オス)
病歴:
右肩部皮下腫瘤を摘出し、病理組織検査で粘液肉腫と診断されたため、抗がん剤感受性検査を行った。
病理組織診断:
粘液肉腫
粘液腫様の腫瘍細胞が不整形の空隙を形成しながら充実性に増殖している。
感受性検査結果:
培養した細胞ではカルボプラチンで45%ほどの抑制効果が認められ、アクチノマイシンD処置に対しても30%程度の抑制効果が認められた。
全体的には、これまでの症例と比較し化学療法剤への抵抗性が認められていた。
培養後の細胞観察像: 増殖細胞の存在を確認
治療:
検査時は化学療法を行わず、その6か月後に同サイズの腫瘤の再発を認めたためカルボプラチン120mg iv を投与。
予後:
投与後二週間後に、元気食欲は変わらず腫瘤がほぼ消失したため、抗がん剤治療を継続している。
症例37(犬、6歳、去勢オス)
病歴:
三年前から存在した左臀部の腫瘤が増大したため、細胞診をしたところ肥満細胞腫と診断された。
当該腫瘤を切除し、抗がん剤感受性検査を行った。
感受性検査結果:
培養した細胞ではロムスチンで80%ほどの抑制効果が認められ、シクロフォスファミド、アクチノマイシンD処置に対しても60 %ほどの抑制効果が認められた。
ミトキサントロン、ビンブラスチン、トセラニブ処置に対しては50 %ほどの抑制効果が認められた。
培養後の細胞観察像: 多数の腫瘍細胞の存在を確認
治療:
ロムスチンを68mg/m2-57mg/m2で3週間隔合計3回投与した。
予後:
肝酵素の上昇により治療を休止したが、治療後4か月間は寛解状態を維持していた。