抗がん剤感受性検査の利用例
症例22(犬、12歳、避妊メス)
病歴:
ハイグレードの肥満細胞種(Patnaik グレードIII)と診断され、断脚を行った際に採取した腫瘍組織を抗がん剤感受性試験に供した。
感受性検査結果:
トセラニブ処置で90%ほどの抑制効果が認められ、イマチニブ処置に対しても80%弱の抑制効果が認められた。
培養後の細胞観察像: 増殖細胞の存在を確認
治療:
トセラニブ2.4mg/kg 週3回の投与を行った。
予後:
二週間後に転移が認められ、その後イマチニブとビンブラスチンの併用投与を行ったが、治療開始後2カ月で死亡に至った。
症例23(犬、12歳、去勢オス)
病歴:
鼻腔未分化癌、鼻腔腫瘍ステージ3と診断され、篩板の融解も見られた。遠隔転移は認められていない。
感受性検査結果:
ラパチニブ、トセラニブ処置で90%ほどの抑制効果が認められ、カルボプラチン処置に対しても75%ほどの抑制効果が認められた。
培養後の細胞観察像: 増殖細胞の存在を確認
治療:
トセラニブ 2.46 mg/kg を2日に1回で投与開始。
予後:
病変の大きさが30%以上減少したが、食欲低下が認められたため1.95mg/kgで3日に1回投与に減薬。治療開始4カ月後、状態を維持している。
症例24(猫、12歳、避妊メス)
病歴:
右後肢跛行の主訴。股関節部より断脚を行い、中足骨部の骨融解が見られた部位から腫瘍を摘出し、病理組織検査と抗がん剤感受性検査を実施。病理組織検査では未分化な軟部組織肉腫と診断。
感受性検査結果:
培養した細胞ではカルボプラチンの高濃度処置で60 %ほどの抑制効果が認められ、トセラニブの高濃度処置で90 %ほどの抑制効果が認められた。ドキソルビシン処置に対しては抵抗性を示した。
培養後の細胞観察像: 増殖細胞の存在を確認
治療:
トセラニブ7.5mg/head 隔日投与で治療を開始。
予後:
治療後5か月時点で、病変は足根部に現局しており、リンパ節転移や遠隔転移も認められていない。副作用も認められなかった。
症例25(犬、14歳、去勢オス)
病歴:
肥満細胞腫のステージ3(原発病巣;Patnaik grade II)と診断され、右浅頸リンパ節の腫大が認められた。全身皮膚にも1cm前後の腫瘤が多数観察された。リンパ節病変を摘出し、抗がん剤感受性検査を実施した。
感受性検査結果:
培養した細胞ではトセラニブ処置に対して濃度依存的な抑制効果が認められ、高濃度処置では80 %ほどの抑制効果が認められた。イマチニブ処置では高濃度処置で40 %ほどの抑制効果が認められた。
培養後の細胞観察像: 増殖細胞の存在を確認
治療:
トセラニブ2.6 mg/kg 隔日投与で治療を開始。
予後:
治療後11週間では部分寛解が認められたが、副作用として潰瘍病変が認められたため休薬。その後、皮膚病変の増大がみられ、減量してトセラニブ2.1mg/kg 隔日投与で治療を再開した。
治療開始から3か月時点で潰瘍病変は消失し、状態を維持している。