抗がん剤感受性検査の利用例
症例42(犬、11歳、避妊メス)
病歴:
陰部脇に直径1.5 cmの皮膚腫瘤を発見し、細胞診で悪性腫瘍の疑いと診断されたため、病変を切除し、病理組織検査と抗がん剤感受性検査を行った。
病理組織診断:
上皮系悪性腫瘍
腫瘍細胞の脈管内浸潤を示す。
感受性検査結果:
培養した細胞ではトセラニブ処置に対して濃度依存的な抑制効果が認められ、高濃度処置では80%ほどの抑制効果が認められた。
カルボプラチン処置では抵抗性を示す結果となった。
培養後の細胞観察像: 腫瘍細胞の存在を確認
治療:
術後にトセラニブ2.5mg/kg,隔日投与を開始した。
予後:
治療開始6か月後時点で血液検査での副作用や再発は認められていない。
症例43(猫、3歳、去勢オス)
病歴:
左大腿部の腫瘤の細胞診検査の結果、肥満細胞腫と診断され、切除後に再発が認められため、抗がん剤感受性検査を行った。
感受性検査結果:
培養した細胞ではニムスチンで80%ほどの抑制効果が認められ、イマチニブ、プレドニゾロン処置に対しても68-70%の抑制効果が認められた。
治療:
術後イマチニブ5.7mg/㎏と3.8mg/kg(ともにEOD)を一ヶ月おきに切り替えて継続使用した
予後:
治療開始後から4か月の時点で再発は認められてない。
症例44(犬、12歳、避妊メス)
病歴:
腹側の頸部腫瘤を認め来院、甲状腺腫瘍やCTで肺への腫瘍の転移が疑われたため切除生検を行い、他社での病理組織検査と抗がん剤感受性検査を依頼した。
感受性検査結果:
培養した細胞ではトセラニブで56%ほどの抑制効果が認められた。その他の薬剤に対しては抵抗性を示す結果となっていた。
治療:
手術後、トセラニブを2.5mg/kg eodで投薬し、6か月継続している。
予後:
治療開始後から6か月の時点で再発や明らかな転移病巣は認められてない。
症例45(猫、12歳、去勢オス)
病歴:
来院時に鼻汁がひどく、レントゲンで右鼻腔が白濁していた。生検を行い上皮性悪性細胞を認めたため、抗がん剤感受性検査をおこなった。
感受性検査結果:
培養した細胞ではミトキサントロンで54 %ほどの抑制効果が認められた。
トセラニブ、シスプラチン、ラパチニブ、Verdinexor、ピロキシカム処置に対しては43-49 %ほどの抑制効果が認められた。
治療:
抗がん剤感受性検査前に、カルボプラチンと投与していたが、検査後にミトキサントロンを3週間間隔で3回投与した。
予後:
治療開始後から6か月の時点で病態の進行は認められていない。